昨年11月にiPhone 12 ProからiPhone 16 Proに買い換えていたのですが、iPhone 16 Proの広角カメラ(メインカメラ)で撮った写真は流れというか、ボケというか、滲みがひどいです。
最近のスマホは「カメラしか進化していない」と言われるほど変わり映えしないと批判されたりしますが、裏を返せばカメラは進化しているということ。iPhone 12 Proでも別にカメラの画質には不満はありませんでしたが、iPhone 16 Proになったら更に綺麗な写真が撮れると期待していました。
とはいえ私は非リアなのでiPhoneで撮るのはTwitterやブログに上げる用のテーブルフォトが多いのですが、Mac miniを配送修理したときの修理明細書の写真をiPhone 16 Proで撮った時、周辺部が流れているというか、ぼやけているというか、滲んでいることに気が付きました。
ていうか、iPhone 16 Proのメインカメラってかなり被写界深度浅い?この明細用紙、折り目のせいで多少高低差があるんだけど、中心部から外れたところはボケ始めている。たったこの程度の差で。たしかに、年々センサーサイズは大型化してるらしいけど…。正直ここまで浅いと使い勝手悪くないか? https://t.co/jhVbZ0n1IJ
— ぼくや (@bokuya) November 9, 2024
iPhoneのカメラは年々イメージセンサーが大型化しており、それに伴い被写界深度が浅くなっているので、その時は「紙の折り目で生じた高低差でピントが外れたのかな?」と思ったのですが、冷静に考えるとさすがにそこまで被写界深度が浅いというのはありえません。35mmフルサイズで超大口径レンズを使っているとかならともかく。
iPhone 12 ProとiPhone 16 Proの実写比較
iPhone 12 Proを使っていたときはこのような症状が気になったことが全くなく、まずはiPhone 12 ProとiPhone 16 Proとで、全く同じシチュエーションで写真を撮って比較してみました。いずれの写真もクリック(タップ)で原寸大画像を表示します。
書類の文字


PCのキーボード


iPhone 16 Proの写真は明らかに「流れている」
原寸大画像を見ていただくとよく分かりますが、iPhone 12 Proは隅々までクリアに写っているのに対して、iPhone 16 Proは周辺部が明らかに流れています。
特に「黒地に白」の方がより強く症状が現れるようで、キーボードの写真ではかなりはっきりとこの現象が見て取れます。
これはちょうどテーブルフォトぐらいの距離感で撮影したときのみに発症し、風景写真とかであれば発症しません。
また、この症状が現れるのは広角カメラのみで、超広角カメラや望遠カメラでは現れません。


ちなみに友人がiPhone 15 Proを持っていたので同じ条件で撮らせてもらったのですが、15 Proも全く同じ症状が現れていました。
Appleへ問い合わせ、そしてGenius Barへ
Apple サポートのスペシャリストは「故障(初期不良)」判定
円安で値段が高騰し続けているiPhone、高い金を出して買い換えたのに、新しいカメラがこの出来では到底納得できません。
ネットを調べてみるとiPhone 15 Proの頃からApple サポートコミュニティに同種の相談がいくつか寄せられていたり、Twitter(現X)で同じようなシチュエーション(書類を撮ったとか)でボヤけるという投稿があったりしたものの、著名なサイトとかでこのことを指摘しているところは皆無で、全く話題にはなっていませんでした。
iPhoneでこのような「仕様」があれば、話題になっていてもおかしくはないはずです。いくつかネットに同様の投稿があるとはいえ、これだけでは「仕様」なのか「頻出の初期不良」なのか判然としません。
というわけで、Appleサポートに「仕様なのか?初期不良なのか?」を問い合わせてみることに。
最初はチャットサポートで画像送って見てもらったり診断プログラムを実行してみたりしたものの、チャットサポートでは判断ができず「スペシャリスト」とやらによる電話サポートへと取り次ぎ。
そこでも写真を送って見てもらったりしたのですが、最終的には「仕様というには滲みすぎている」とのことで修理の提案を受けました。
データを提出してエンジニアリングチームで分析する「技術調査」をすることもできるとのことでしたが、調査には数日かかるので、どうせ故障の可能性が高いから修理したほうが早いですよ、という感じでした。
正直「仕様である」との回答を予想をしていたので、この故障判定は意外な結果でした。ここで「仕様です」と言われればもうそこで終わりだったのですが、Appleのスペシャリストとやらがそう言うなら…と、翌日電車で1時間かけて都会のApple StoreのGenius Barへ。
Genius Barの答えは・・・「仕様」!!!
そしてApple StoreのGenius Barで事情を説明し、写真も見てもらったうえでの判定が・・・「仕様である」でした。
ただこのスタッフが「拡大したらぼやけるのはしょうがないです」「一眼カメラとは違うので」「(iPhone 12 Proの写真は)全く同じ条件で撮ったものではありませんよね?」という感じであまり問題を理解していない様子で、ちょっとムカつきました。12 Proとの写真は全く同じ条件で撮ってるし…。そもそもお前ら一眼カメラ並みの写真が撮れるって宣伝してるだろうが!!
まるでベイヤーセンサーの写真を原寸大で見て「くっきりしてないじゃないか!」*と文句を言っているクレーマーにされかけたので、「私はAppleのスペシャリストに『仕様というにはひどい』と修理を提案されたから電車で1時間かけてここに来ている」という旨を改めて説明すると、スタッフはバックヤードに行き詳しく確認しましたが、結局「仕様である」との見解は変わりませんでした。「部品の交換ができないわけではないが、症状の改善は約束できない」という感じ。
*…デジタルカメラの99.9%は「ベイヤー配列」と呼ばれる方式のイメージセンサーを搭載しているのですが、簡単に言えばこれは1つの画素で1つの色のみを捉えて残りの色は補完処理によってカラー写真を記録する方式で、これにより原寸大で見ると「どことなくクッキリしていない」という写りになります。デジタル写真を原寸大で見た時の何となくぼやけてる感じはこれが原因です。ちなみにFoveonという1の画素でRGB全ての色を捉える方式のイメージセンサーで撮られた写真は原寸大で見ても大変クッキリしています。
まあ、「カメラに詳しいスタッフにも確認してもらいましたが、『拡大したらしょうがないよね』って言っていました」という確認の仕方には正直ちょっとモヤモヤし、店員の対応・認識には終始疑問がありましたが、もともと仕様とは思っていたのでこれ以上は特に食い下がらず。Apple Storeの他の実機を触って見ても同じ現象が起こっていて「やっぱり仕様なんだな」との確信は得れたので、結局何もせずApple Storeを後にしました。まさに骨折り損のくたびれもうけ。
技術調査の結果も「仕様」
それで仕様は仕様だったのですが、電話サポートのときに言われていた「技術調査」のことも気になっていたので、せっかくなので再度Appleサポートに問い合わせて、Genius Barでのことも説明うえで「技術調査」も依頼しました。
別にこれは端末をAppleに送るとかではなく、写真ファイルや動作をモニターしたデータを提出しAppleで分析するというもので、サポートが遠隔でiPhoneの動作をモニターする中で指示された通り写真を撮ったりして終了。
後日、調査結果を聞くと結局「仕様」とのことでした。まあ、ですよねー、という感じ。
せっかくなのでフィートバックとして「当初のスペシャリストも『仕様というにはひどい』という判定だったし、常識的な感覚からすればこの写りはひどいものということになると思う。次作以降は改善をしてもらいたい」という旨を伝えたら「お客様の声をしっかり受け止めて精進して参ります」と言われて、外資系企業らしからぬ言い回しに軽く困惑しましたw
結論:iPhone 16 Proでは綺麗なテーブルフォトが撮れない
技術調査の結果が「仕様」なので、「iPhone 16 Pro広角カメラはテーブルフォトぐらいの距離感で写真を撮ると周辺部がひどく流れるので使い物にならない」ということで確定です。。
技術調査の時のサポートからは「超広角カメラを使うことで回避できます」との案内を受けました。確かに広角カメラは最短撮影距離がかなり長くなっていることもあり、テーブルフォトを撮る時は自動的に超広角カメラに切り替わること(マクロ撮影コントロール)が多く、設計思想としては近距離撮影時は超広角カメラを使う想定なのかもしれません。
しかし、広角カメラと超広角カメラの間では歴然たる性能の差がある上に、マクロ撮影コントロールは超広角カメラのクロップになるのでかなり画質が低下します。なのでマクロ撮影コントロールで回避できるからOK、というのはちょっと無理があると思います。
最近のiPhoneのカメラはイメージセンサーが猛烈な勢いで大型化していますし、広角カメラの画角も26mmから24mmへと広角化されており、かなり無理をした設計になっているのでしょう。その副作用としてこの現象が起きている、という感じでしょうか・・・。
限定的なシチュエーションとはいえ、12 Proからの進化を期待していたので正直これにはガッカリです。ブログやTwitterに写真を上げることも多いので、ちょっと16 Proのカメラは使いにくいと言わざるを得ません。
これまでiPhoneは4年ぐらいの周期での買い換えで、歴代iPhoneも手元に残してきたんですが、もし17シリーズで改善されることがあるなら16 Proは下取りに出してすぐ買い換えるかも。。
ちなみにこの話はApple サポートコミュニティに投稿していて、Genius Barへ行った時までの話は投稿していました。
iPhone 16 Proの広角カメラの写真がぼやける、滲む、流れる – Apple コミュニティ
今回せっかくなので技術調査の顛末も追加してブログを書きました。。今見たら「私もです」の票が110まで増えているので、やっぱり同様の現象に困っている人は結構いるみたいですね。
出っ張りが凄すぎだり、最近のiPhoneのカメラは高画質を追求するあまり歪な進化をしている気がしますが、17シリーズではちょっと立ち止まって、落ち着いて改善してもらいたいものです。。
コメント
最近のスマホ事情に係る重要な課題の提起をありがとうございます。
恐れ入りますが、記事を読み質問が生じましたので記載させてください。
■16 Proについて「ボケというか、滲みがひどい」とのことですが、
このようなきめ細かい箇所について気づきを得られる観察能力に驚愕いたしました。
こういった点に気づくことができるのは、何か理由がおありでしょうか。
(少なくとも、私であれば絶対に気づくことはできません)
■他の大勢の方も類似した事象が生じているとのことですが、Appleが公式に不具合を認めるためには
バタフライキーボードのような大規模不具合が生じていないと難しいかなと感じました。
(そもそもキーボードが使えなくなる事象だったため、利用者に直接悪影響が出ていた)
Appleの「仕様」との見解が解せませんが、これについては認めざるを得ない状況なのでしょうか。
■私はiPhone 15 Pro Maxを利用していますが、ぼくや様の記事を確認した後に手元のキーボードを撮影したところ
まったく同じ「流れる」現象が生じておりました。(広角カメラ)
これについては、数年前から同様の事象が生じていた認識でよろしいでしょうか。
立て続けにご質問いただきありがとうございます。
■ブログにあげたりしますので、写りはよく確認するクセがついているんですよね。
PCの大画面に表示して確認したりしますので、そうしていたら気付いたというわけです。
■Apple的には「超広角カメラで回避できる」という建前があり、完全に近距離撮影ができないというわけではないので、まあ、仕様として受け入れざるを得ないのかなぁというところです。
その回避策があるせいで、Appleが改善する気がないとすればそれは非常に残念ですが…。
■15 Pro Maxの事例共有、大変ありがとうございます。
どうも15シリーズから発生していた現象のようで、これはこの世代でイメージセンサーがさらに大型化したからではないかと思っています。
16シリーズでもこの現象が解消されなかったことが大変不可解なのですが、Appleが改善する気がないとすればそれは非常に残念です…。