高級腕時計の値上がりがエグすぎる

ふとオメガのWebサイトを見ていたら、私の所有しているシーマスター・アクアテラ(Ref.
220.10.38.20.03.001)の価格が1,001,000円になっていて、ついに100万円の大台に乗っていました。どうもこの前の8月に値上げがあったようです。

私が2022年4月に購入したときは726,000円(消費税10%税込)でしたから、そこからたった3年で100万越えとは、驚きです。しかも同じものが、ですよ。

そもそもこの時計は2017年の発売で、発売時の定価は637,200円(消費税8%税込)でした。

消費税率が変わっているので本体価格で比較すると、2017年発売時は590,000円、私が2022年に買った時は660,000円で、4年間で12%(7万円)の値上がり。そこから現在は910,00円で、私が購入してから3年間で38%(25万円)の値上がりです。発売から8年間で54%(32万円)も値上がりしており、かつ値上げの大部分がここ数年の間に起こっていることがわかります。

オメガに限らずここ数年の高級腕時計の定価の値上がりは凄まじいです。たった3〜4年の間で軒並み1.5〜2倍の値段になっており、一気に価格帯が上がっています。

この短期間で急激なインフレが起こったわけでもなく、原因の大部分は原材料価格の高騰で、その発端は2022年のロシアとウクライナの戦争でしょう。加えて、日本では最近の円安による影響もあります。

ちょうど私がアクアテラを購入して高級腕時計の世界を知った直後から猛烈な値上がりが始まっており、あと数年早ければ・・・と思いますorz

私のコレクションの値上がり具合

今私は高級とされる腕時計を3本所有していますが、それぞれの発売時定価、私が買った時の定価と、現在の定価を比べるとこんな感じ。

モデル発売時定価私が買った時の定価現在の定価発売からの値上がり率
オメガ
シーマスターアクアテラ
637,200726,0001,001,00057%2017年発売(消費税8%)
2022年4月購入
値上がり率は税込同士で比較
オメガ
スピードマスタープロフェッショナル
847,0001,144,0001,276,00050%2021年発売
2023年8月購入
ロレックス
サブマリーナ
847,0001,318,9001,400,30065%2020年発売
2024年1月購入
合計2,331,2003,188,9003,677,300
※価格は全て消費税込み

このコレクションではそれぞれの購入後から数年の間で総額48万円も値上がりしています。そして、それぞれ発売時に買っていれば、総額86万円も安く購入できていました。発売時からの現在までの値上がり総額は134万円で、2020年基準だったら1〜2本の同じ価格帯の高級腕時計が買えますよ!

買う時期がたった数年違うだけで同じものが233万円から367万円になるなんて、エグすぎです。。高級腕時計はほんとに高くなったなぁと思います。

ウクライナ戦争が始まった直後の値上がりは本当に異常で、2022年から2023年にかけては多くのブランドで何回も値上げが行われ、2023年のオメガに至っては年3回も値上げするという事態でした。

さすがにここ1年ぐらいは値上げが一服した感がありますが、依然値上げは継続的トレンドであり、毎年恒例行事化しています。ここまでの高価格になると数%でも値上がり幅は大きくなり、結構堪えます。。

値上げで高級腕時計は庶民が買えないものに

そもそも高級腕時計の値段は昔から一貫して上がり続けています。急激な値上げ前の2020年前後の定価だって、2000年代、2010年代と比べたらかなり上がっています。2000年代なんてロレックスが40〜50万円、オメガが20〜30万円で買えていたわけですからね。

小学校か中学生の頃、ダウンダウンDXの「スターの私服」コーナーで30〜40万円ぐらいの高級腕時計が出てきて「月給じゃん(月給ほどの金額を「たかが時計」にかけるなんて信じられない)」と思った記憶が、本当に遠い昔のことになりました。今や月給どころか「ボーナスじゃん」だし、なんならボーナスでさえ足りませんよ…。

まあ、ここ10年、15年で外装の品質は一気に上がり、ムーブメントの高性能化や自社開発化も進んでいますから、2000年代とは別物レベルの高品質になっている、というのはありますが。。

しかし、ここ数年の異常な値上げを経て、もうここまで来ると普通のサラリーマンみたいな庶民が高級腕時計を買うのって厳しいよなぁって感じます。

50万円からせいぜい70万円程度までなら、高いのは高いですがボーナスで買うとか、貯金して買うというのがまだ現実的な範囲です。時計好きとか、何かの記念とかご褒美で買うっていうのであれば、買えないことはない価格だと思います。一定のスパンで腕時計を買っていってコレクションする、というのが趣味として成立するレベルだったでしょう。

しかし、100万円越え、まして120万とか130万円となると、普通のサラリーマンが買うハードルは一気に上がります。ボーナスでも足りなくなってくるし、年収に対する比率もかなり高まります。「たかが時計」に100万を超える金を出すなんていうのは、もう相当な時計好きにしかできない領域でしょう。この価格では時計をコレクションするというのは難しく、1本かせいぜい2,3本を持つのが精一杯です。

私の初めての高級腕時計は30歳の記念で買った72万円のシーマスターアクアテラですが、これが今の定価の100万円だったら買えていただろうか?と思います。あの時でも、72万円の時計を買うというのは清水の舞台から飛び降りるような覚悟でした。その後逆にそれで金銭感覚が破壊されたことによりスピードマスターを買ったりサブマリーナを買ったりとかはしていますが、初手で100万円前後の高級腕時計を買うというのは相当にハードルが高いと思います。

高級腕時計は宝飾品であり、コストダウンをして手頃な価格に、みたいなことが見込めるものではありません。製造コストはそのまま販売価格に反映されますし、今後も高品質化、高性能化は進み、値上がりが止まることはないでしょう。そして日本は低成長から抜け出せず、賃金も上がらず、この値上げについていくだけの賃金アップは到底見込めません。

そうすると、今が庶民がロレックスやオメガのような高級腕時計を買うことができる最後の時代なのかな?と思ってしまいます。

もちろん今のロレックスやオメガの100万円越えの価格も相当高いですが、まだ多少の無理をすれば買えないことはない価格です。しかしこれが150万円越え、200万円越えとなると、さすがにもうほとんどの人が手を出せなくなるのではないでしょうか。ロレックスやオメガが(価格の障壁的な意味で)「雲上時計」になってしまう、というのはそう遠くない未来に起こることじゃないかなぁ、と思います。

それどころか、上がり続ける定価が原因で日本の消費者が離れていき、ブランド自体が日本から撤退するというシナリオも十分考えられます。ロレックスのような2次流通価格の方が高いブランドは安泰でしょうが、それ以外のブランドは、どうなのか?オメガなど相応のブランド力があるところは良いとして、ミドルクラスの腕時計の販売ってもう既にかなり厳しくなってるんじゃないかなぁって思います。○○万円もするなら買わない(買えない)というブランド、そこそこある気がします。高級だけどマイナーなブランドも、元々小さいパイがさらに小さくなっていく中で維持できるのかと。

私も300万円越えの時計コレクションを有するので腕時計愛好家と言っても良いと思いますが、ここからさらにロレックスやオメガクラスの時計を買い足すのは中々大変です。ミドルクラスでもかなり高くなっていますからミドルクラスを買うのも大変で、庶民がコレクションを充実させるというのが本当に厳しいな、と感じます。。2000年代とまでは言わずとも、せめて2020年頃の定価だったらもう少し気軽に1,2本買い足せていたと思うんですが。。。

10年後、20年後にはロレックスやオメガではなく「憧れの時計、オリスを書いました!!」「念願のロンジンを書いました!!!」みたいな感じになっているのでしょうか・・・(それらのブランドを馬鹿にするわけではないですが)。

まあ、私が高級腕腕時計を買い足すのは残り1本ぐらいになるでしょうが、買えるうちに欲しいものを買っておこう、と思います。。

ほんと、高級腕時計の値段の行方は末恐ろしいものがありますが、どうなっていくんでしょうか・・・。

付録:各ブランドの主要モデル値上がり調査

せっかくなので、いくつかの有名ブランドの主要モデルの値上がり状況を調べてみました。現行モデルは2020年前後に発売されているものが多いので、同じものがここまで上がっているのか、と分かります。

全て税込価格で、消費税率が8%のものについては明記しています。2019年発売のものは特記無き場合消費税率10%です。

ロレックス

  • コスモグラフ デイトナ(Ref.116500LN → 126500LN)
    • 2016年発売時の定価:1,274,400円(消費税8%)
    • 2021年8月時点の定価:1,457,500円
    • 2025年10月時点の定価:2,349,600円(Ref.126500LNにモデルチェンジ)
  • サブマリーナー(Ref.124060)
    • 2020年発売時の定価:854,700円
    • 2025年8月時点の定価:1,400,300円
  • サブマリーナー デイト(Ref.126610LN)
    • 2020年発売時の定価:965,800円
    • 2025年10月時点の定価:1,570,800円
  • エクスプローラー36(Ref.124270)
    • 2021年発売時の定価:676,500円
    • 2025年10月時点の定価:1,104,400円
  • デイトジャスト36(フルデットベゼル&ジュビリーブレスレット)(Ref.126234)
    • 2019年発売時の定価:898,700円
    • 2025年10月時点の定価:1,399,200円
  • デイトジャスト36(ドームベゼル&オイスターブレスレット)(Ref.126200)
    • 2019年発売時の定価:743,600円
    • 2025年10月時点の定価:1,135,200円

DJの発売時定価は正しくないかも・・・。

未だロレックスは2次流通価格の方が高いですが、2020年頃の定価って本当に安かったなぁって思ってしまいますね。。

オメガ

  • スピードマスタープロフェッショナル(サファイア風防)(Ref.310.30.42.50.01.002)
    • 2021年発売時の定価:847,000円
    • 2025年10月時点の定価:1,276,000円
  • シーマスター ダイバー300M(Ref.210.30.42.20.01.001)
    • 2018年発売時の定価:561,600円(消費税8%)
    • 2025年10月時点の定価:946,000円
  • シーマスター アクアテラ(Ref.220.10.38.20.03.001)
    • 2017年発売時の定価:637,200円(消費税8%)
    • 2025年10月時点の定価:1,001,000円

50万円台のシーマスター ダイバー300Mなんてめちゃくちゃコスパが良いです。今となっては高嶺の花ですね・・・。

タグホイヤー

  • カレラ(Ref.WBN2112.BA0639)
    • 2021年発売時の定価:308,000円
    • 2025年10月時点の定価:484,000円
  • フォーミュラ1(Ref.CAZ2012.BA0876)
    • 2016年発売時の定価:324,000円(消費税8%)
    • 2021年5月の定価:357,500円
    • 2025年10月時点の定価:583,000円
  • モナコ(Ref.CBL2111.FC6453)
    • 2019年発売時の定価:704,000円
    • 2025年10月時点の定価:1,072,500円

タグホイヤーといえば20〜30万円台からエントリーできる「高級腕時計の入門ブランド」という立ち位置、評価だったと思うのですが、今となっては50万円スタートのブランドとなり、高級腕時計の入門の敷居が高くなっていることが伺えます。。

グランドセイコー

  • SBGR317
    • 2019年発売時の定価:518,400円(消費税8%)
    • 2025年10月時点の定価:638,000円

日本のグランドセイコーはそこまで劇的な値上げはしていません。しかし、ハイビートモデル、新型脱進機械採用モデルなど様々なバリエーションがある中で高付加価値モデルの値段は大きく上がっています。

現在は廃盤となっている37mmの小径廉価モデルの発売時定価は432,000円(税抜400,000円)でしたから、グランドセイコーもエントリー価格は上がっています。

ゼニス

  • クロノマスター スポーツ(Ref.03.3100.3600/69.M3100)
    • 2021年発売時の定価:1,166,000円
    • 2025年10月時点の定価:1,592,800円
  • デファイ スカイライン(Ref.03.9300.3620/51.I001)
    • 2022年発売時の定価:968,000円
    • 2025年10月時点の定価:1,290,300円

IWC

  • ポルトギーゼ クロノグラフ(Ref.IW371605)
    • 2020年発売時の定価:874,500円
    • 2025年10月時点の定価:1,287,000円

オリス

  • アクイスデイト キャリバー400(Ref.01 400 7769 4135-07 8 22 09PEB)
    • 2021年発売時の定価:374,000円
    • 2025年10月時点の定価:566,500円

ミドルクラスのブランドって、価格がミドルクラスだからこそっていうのがあるので、ミドルクラスの値段が上がるのって厳しいんじゃないかなぁって思います。。

ジャガールクルト

  • マスター ウルトラスリム(Ref.Q1238420 → Q1238421)
    • 2019年発売時の定価:896,400円(消費税8%)
    • 2025年10月時点の定価:1,487,200円(Q1238421にモデルチェンジ)

ショパール

  • アルパイン イーグル 41(Ref.298600-3001)
    • 2019年発売時の定価:1,617,000円
    • 2025年10月時点の定価:2,310,000円

アルパインイーグル、めちゃくちゃカッコよくてラグスポ時計として161万円ならまだギリギリ買えるレベルだった思いますが、231万円となるともう無理です・・・。

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