オメガ・シーマスターアクアテラが腕にフィットしない

30歳の誕生日に初めての高級腕時計としてオメガ・シーマスターアクアテラ(Ref.220.10.38.20.03.001)を購入し、もう1年以上が経ちました。

基本的にほとんど毎日着けていて、デザインや実用性には非常に満足しているのですが、アクアテラには唯一にして最大の欠点があり、腕にフィットしない、という悩みがあります。

このアクアテラは現代においては小ぶりなケース径38mmで、かつラグtoラグも45mmと短く、一見するとフィット感に優れる小径ケースの時計です。私の腕周りは約16.5cmで比較的細いとされるほうですが、このアクアテラのスペックだけ見れば問題なくフィットするはずです。

それでなぜ「腕にフィットしない」という悩みが出てくるのでしょうか?その原因はブレスレットにあります。

クラスプの中板が長い&平べったい

アクアテラのブレスレットは両開きのバタフライ・クラスプを備えますが、その中板が長いうえに平べったいため、装着時のフィット感を大きく損ねているのです。

普通の腕時計では中板は腕に沿うように全体的にカーブを描いているのに対し、アクアテラの中板は長く、平べったくできています。

オメガ・シーマスターアクアテラのクラスプ
アクアテラの中板
オメガ・シーマスターアクアテラのブレスレットの輪
オメガ・シーマスターアクアテラ
オメガ・スピードマスタープロフェッショナルのブレスレットの輪
オメガ・スピードマスタープロフェッショナル
セイコー・ブライツSAGZ081のブレスレットの輪
セイコー・ブライツSAGZ081

他の腕時計がクラスプ部分もカーブしていて腕にフィットするようになっているのに対して、アクアテラのクラスプ部分は明らかにフラットです。

手持ちにはないので直接の比較はできませんが、調べる限り他の両開きクラスプの時計の中板も全体的にカーブしていて短いのが普通で、やはりアクアテラの中板は異常に長くて平べったいです。

オリエント・メカニカルムーンフェイズ RK-AY0102Sのクラスプ
オリエントスター・メカニカルムーンフェイズ RK-AY0102S 出典:公式サイトより

このため、ブレスレットのクラスプ部分が腕に上手くフィットせず、長くて平たい中板により軽くテコの原理が発生し、装着感が悪いです。ブレスレットの長さ自体はちょうどいいのに、このクラスプのせいでちゃんとフィットしている感じにならないんですよね。

38mmケースで細腕にもフィットする時計と思いきや、長くて平べったいクラスプの中板により、この中板をカバーできるほどの大きい腕じゃないとフィットしないという、なんともちぐはぐな仕様になってしまっているのです。

それのせいもあり、私の腕では装着時のケースとクラスプの理想的なバランスにできず、とても気になります。

今コマ調整は12時側と6時側で対称で、ケースとクラスプが平行になる、理想的とされるコマ調整なんですが、その状態で装着時のバランスが悪いんですよね。

装着時、私が思う腕の上での理想的なケースの位置は次のような感じです。

オメガ・シーマスターアクアテラの理想的なケース位置

ケースが腕のド真ん中に乗り、12時側も6時側もブレスレットがちゃんと腕を包み込むようにフィットし、時刻も見やすい。

しかし、このときクラスプの位置は、長くて平べったい中板のせいで12時側に偏っている感じになり、明らかに中心からズレている、カクカクしている印象を与えます。

アクアテラ到着時、ケースの位置が良い時のクラスプの位置
アクアテラ装着時のケースの位置が良い時のクラスプの位置

かといって、今度はクラスプの位置をど真ん中にすると、

オメガ・シーマスターアクアテラの理想的なクラスプの位置

ケース側はこうなります。

アクアテラ装着時、クラスプの位置が理想的なときのケースの位置

ケースが12時側に寄り過ぎている感じです。12時側のブレスレットが腕を包み込まずストンと落ちてしまっています。写真では分かりづらいですが、実物は結構偏っている感じです。

他の腕時計はケースを理想的な位置にしたときに、クラスプの中板は厳密にはド真ん中には来ていませんが、腕に沿うようにカーブを描いているので装着感や見た目に問題が生じることはありません。

セイコー・ブライツSAGZ081装着時のクラスプ
セイコー・ブライツSAGZ081装着時のクラスプ
スピードマスター装着時のクラスプ
オメガ・スピードマスター装着時のクラスプ

半コマが「半コマ」じゃないので微調整も難しい

アクアテラの装着感にはずっと悩んでおり、ブレスレットのコマ調整により改善しようと幾度も購入店(正規店)へ足を運び調整をしました。

購入店での再調整は3回やって、結局「再調整2回目」の状態に戻してもらって今に至ります。再調整だけで4回来店するというw ロレックスマラソンをしていた頃はついでに行けたのでちょうどよかったです。

  • 購入時:12時側7コマ・6時側6.5コマ
    →6時側やや短い調整。
     しかし、日中腕がむくんでくるとキツくなるため、再調整へ。
  • 再調整1回目:12時側8コマ・6時側6.5コマ
    →キツい旨伝えると「1コマ足して様子を見ましょう」とのことで1コマを足した。6時側が短い調整。
     しかし明らかにガバガバで、再調整することに。
     (足すのは半コマでいいです!と言えばよかったのだが・・・)
  • 再調整2回目:12時側7コマ・6時側7コマ
    →半コマを取り、フルコマを足したことで前の状態より半コマ分短くなった。左右対称・並行の調整。
     長い間この調整で使っていたが、夏場はもう少し緩くてもいいと感じることもあり、また依然装着感の問題があることから、6時側を1コマ取って6時側と12時側にそれぞれ半コマを足すパターンを試したくて、再び調整へ。
  • 再調整3回目:12時側7.5コマ・6時側6.5コマ
    →想像以上に緩かった。結局その後「再調整2回目」の状態へ戻してもらった。

※便宜上「半コマ」を0.5コマとして表記。また、クラスプ側の固定コマはカウントせず。

私の腕周りで試せるパターンは全て試したのですが、結局ベストな状態にはなりませんでした・・・。

アクアテラには「半コマ」がついているので微調整ができるかと思いきや、アクアテラの半コマって文字通り半分の1/2コマ(0.5)ではなく3/4コマ(0.75)ぐらいのフルコマに近いサイズなので、かゆいところに手が届かないんですよね。「ほんのちょっと短くしたい」ならできるのですが、「ほんのちょっと長くしたい」には半コマが大きすぎてできません。

確かに見た感じ「半分(1/2)ではないな」とは思っていたのですが、2/3コマ(0.66)サイズだと思っていました。アクアテラではありませんが、シーマスタープラネットオーシャンの価格.comのクチコミで以下のような書き込みも見ましたし。

そうなんですよね、以前別のスレでも書きましたが、半コマって実は半分ではないんです。
(モデルによる違いはあるでしょうが。)
おおよそ2/3コマ分あるので、その組み合わせにより1/3コマ単位での調整ができるのです。

価格.com – 『サイジングの大事さ?オメガのコマ調整。』 腕時計のクチコミ掲示板

なので、再調整2回目の状態から1コマ除去して半コマを2個追加すれば「-1+2/3+2/3=1/3」となり、クラスプの位置を6時側へ寄せつつ、長さも1/3コマ分とほんの少しだけ伸ばすこともできて、ベストな状態になるのでは?と思ったのですが、よく見てみると半コマって2/3サイズですらないんですよね。

少なくとも3/4サイズ(0.75)はあるように見えます。下手したら4/5コマ(0.8)ぐらいありそうです。

オメガ・シーマスターアクアテラの半コマ

この場合、1コマ除去&半コマ2個追加は「ほんの少し(1/3コマ)だけ長くなる」のではなく、「0.5〜0.6コマ分の追加」となり、思っていたより緩くなってしまったというわけです。

実は、究極の選択として「6時側の1コマを12時側に移植する」というのも自分で精密ドライバーを使ってやってみたこともありました。長さは変えずに、バランスだけ調整しようとしたのです。

しかし、それでクラスプ位置はちょうど良くなった感じがしましたが、12時側-6時側で2コマ差となるとブレスレットの輪が明らかに歪な形になってしまい、じっくり試すことなくすぐ元に戻してしまいました。腕時計はクラスプを留めた状態で着けるものですから、その状態で歪な形となると厳しいものがあります。

まあ、コマの足し引きで試せるパターンは全て試したので、今度じっくりそのパターンで装着感を確認してみることもアリかもしれませんが・・・。

ちなみに、自分で精密ドライバーでやってみたと書いた通り、アクアテラのブレスレットはネジ式なのですが、ネジ式のブレスレットを自分で調整するのはあんまりおすすめできません。

オメガ・シーマスターアクアテラのネジ
ネジに少しダメージが入っている・・・。というか、正規店での調整時についたものもある。

高級時計ってたいていブレス側面が鏡面仕上げなので誤ってブレス本体にドライバーをひっかけると目立つ傷になりますし、ドライバーサイズの選択や力加減を誤るとネジ山を舐めてしまいます。慣れていない方がすると不可逆的なダメージを与える可能性があるので、時計店でしてもらうのが安全です。私も自分でやったのは「究極の選択」だけで、リストで挙げた調整は全て購入店でやってもらいました。

オメガは改善する気なし!?

アクアテラの新作(シェードシリーズ)ではブレスレットにも変更が加えられ、より細かいコマとなり装着感が向上したとされますが、実はクラスプの中板はそのまま流用されています。

いや、改良するのはコマじゃなくてクラスプじゃないのか!?って思います。。

ただ、コマが細かくなったことでケースとクラスプのバランス調整はしやすくなっているのかもしれません。

しかし、オメガ公式Instagramには、ゴリゴリにケースが12時側に寄っている写真もアップされているんですが、この装着感はオメガも公認なんでしょうか・・・。

アクアテラはシンプル3針で万能的に使えて、エブリデイウォッチとして着用する機会も多い時計なので、実用シーンで大きなマイナスポイントがあるのは非常に困ったものです。しかも、72万も出して買った高級時計で…。装着感というのは時計を着けている以上、常に影響があることですからね。

デザインは非常に気に入っているのですが装着感が悪いというのは大きな問題で、これなら30歳記念の高級腕時計は別のものにすればよかった、とすら思うこともあります。。ロレックスのオイスターパーペチュアルやデイトジャストにして実績を作っておけば今頃サブマリーナ買えてたかもしれんし。

ほんと、なんでこんなクラスプなんですかね・・・。シーマスターアクアテラは本来は万人受けするポジションにあるのに、そこが本当に惜しい時計だなぁと思います。

コメント

  1. 機械式腕時計に関する貴重なご記載をありがとうございます。
    下記質問させてください。

    ★知識が疎く大変申し訳ございません。
     「ラグトゥラグ」とはどのような意味でしょうか。
    ★高級腕時計を所有した経験がないためご教示ください。
     「高級時計ってたいていブレス側面が鏡面仕上げ」とのことですが、ヘアライン加工などもなされておらず
     完全な鏡面仕上げなのでしょうか。
    ★写真を複数枚ご提示いただきましたが、大変たくましい腕をなされていると感じました。
     女性であれば放っておかないたくましさと思料しましたが、ご自身のお考え如何でしょうか。

    • ★ラグトゥラグ
      腕時計からブレスレットにかけて伸びている、12時側と6時側のでっぱりのことですね。
      ラグトゥラグとは、12時側のラグの先端から6時側のラグの先端までの長さのことで、ケース径と並んでこちらも着け心地に大きく影響する数値です。
      ★ブレスの鏡面仕上げ
      はい、コマの側面が全て鏡面仕上げとなります。
      個人的にはあまり鏡面仕上げは好きではありませんが、コマ側面の鏡面仕上げはジュエリーみたいで結構高級感が出ると感じます。
      ★腕について
      お褒めいただきありがとうございます。
      おそらく写真の画角の影響でそのように見えるだけで、腕周り16.5cmの大したことない腕でございます。
      でも手のイケメン度には自信があるのですが、その点についても女性からは放っておかれております。よろしくお願いします。

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