今日で西九州新幹線の部分開業から3年だそうです。
博多駅と長崎駅を結ぶいわゆる「整備新幹線」の1つで、現在は武雄温泉駅から長崎駅までがフル規格新幹線で整備済み、博多駅から武雄温泉駅間は在来線のままとなっており、武雄温泉駅での対面乗り換えによる運行になっています。
あとは博多駅 – 武雄温泉駅までが整備されれば全線開業・・・!なのですが、佐賀県と揉めていて着工すらできておらず、全く先を見通せない状態の、哀れな新幹線です。
せっかくなので、九州在住、実家が長崎県という身から、そんな西九州新幹線に関する所感でも綴ってみようかなーともいます。
佐世保経由ルートが良かった…
私の実家は長崎県にあり、西九州新幹線は本来大きな関心事であるはずなのですが、実家は佐世保以北の県北部地域にあるので、佐世保にかすりすらしない西九州新幹線は別に全然嬉しくないというか、特に何も感じないんですよね。。
なので、私としては「新幹線が佐世保経由ルートだったらなぁ」というのが真っ先に思うことです。
そもそも佐世保といえば長崎県第二の都市ですから、佐世保を通って然るべきのようにも思います。
佐世保経由ルートなら長崎市だけではなく佐世保市も福岡(ひいては関西圏)に直結しますし、これまで同じ県の第一・第二都市であるにも関わらず遠い存在だった佐世保と長崎間のアクセスも大幅に改善します(現状の佐世保駅 – 長崎駅間は快速で約2時間)。県としては佐世保と長崎のより一体的な発展に繋がり、良いこと尽くめのように思います。
西九州新幹線は都市間輸送としては福岡市と長崎市しか結ばないうえに路線距離が極めて短いので、贅沢というか、勿体無いにように感じるんですよね。
ただ、当初の計画は佐世保経由ルートだったのが「どう研究しても年間102億円の赤字が出る」とのことで短絡ルートに変わった経緯があるので、佐世保ルートは夢物語のようですが…。
国鉄民営化で発足間もないJR九州が「長崎ルートはどう研究しても年間102億円の赤字が出る」と政府に報告。佐世保経由が収支上のネックとなっていた。
短絡ルート決定 佐世保市民の怒り 新幹線構想、県北不在「苦渋の決断」 長崎新幹線の軌跡・2 – 長崎新聞
実際、国鉄が85年に出した計画では、環境影響評価を行う路線として佐世保市東部の早岐駅を通る「佐世保寄りルート」が示された。だが、民営化後のJR九州は87年、「年間102億円の赤字となる。再検討が必要」と報告。翌年には政府・与党申し合わせで、優先着工区間とならなかった。
[始動 西九州新幹線]<開業前夜 4>ルート外れ不満の佐世保…「政治力なかった」 – 読売新聞
昔、原子力船の「むつ」の修理を佐世保で引き受けたのに・・・という声もあるそうですが、修理という一時的な出来事の対価として恒久施設である新幹線を持ってくる、というのはちょっと無理がある理屈だとは思います。
いすれにせよ佐世保が置いてぼりにされていることは変わらず、地理的特性から長崎市の発展の好影響を佐世保市が受けることもないので、佐世保の地位がどんどん低迷していくなぁという感じではあります。福岡ともべらぼうに近いわけでもなく(特急で約1時間40分〜50分、車で1時間半)、なんか衰退していきそうな感じです。。
やっぱり並行在来線の問題はでかい
佐賀県と揉めていることで佐賀県内区間の着工すらできていない状態なわけですが、結局は整備新幹線にまつわる並行在来線問題が大きすぎるということなんだと思います。
佐賀県としたら財政負担もあるし、メリットが少ない(元々福岡とは近く、時短効果が薄い)ということもありますが、やっぱり一番の問題は並行在来線の切り離しでしょう。
もともと佐賀と福岡は特急で40分程度で結ばれていたのに、新幹線開業で在来線がJRから分離され、減便、優等列車の廃止、料金の値上げとなれば、地域生活への影響は大きいです。そりゃ「そこまでして新幹線を敷かないといけないのか?」ということになるのは当然です。長崎県民の私でも、今回は佐賀県の主張がご尤もだと思います。。
上下分離方式で列車の運行は引き続きJRが担うとしても、現在の運行密度が将来に渡って継続される保証はどこにも無いわけで。九州新幹線と並行する鹿児島本線も荒尾駅までは現在もJRが運行していますが、久留米以南の地域は減便に次ぐ減便、快速列車および博多・門司港直通列車が大量に廃止されるなど、どんどん不便になっていってるのが現状です。
私自身は高速鉄道網が整備されていくのは良いことだと思いますが、整備新幹線の並行在来線を切り捨てていくというやり方は問題だと思います。
いくら「並行」しているとはいえ、新幹線は在来線の代わりにはなりません。駅数だって全然違うし、料金だって全然違います。例えば、久留米駅 – 博多駅間は在来線だと片道870円ですが、新幹線だと1,740円。大牟田(新大牟田)駅 – 博多駅間は在来線だと片道1,510円ですが、新幹線だと3,520円です。旅行であればともかく、「ちょっと福岡まで遊びに行こう」で気軽に出せる金額ではないでしょう。駅数も、博多 – 大牟田間は鹿児島本線は28駅(快速停車駅15駅)ですが、新幹線は5駅です。
旅行客、ビジネス客だけで地域が成り立つわけではないので、並行在来線の切り離しは地域生活への悪影響が大きすぎます。並行在来線の切り離しがある以上は不幸になる人も多くなるので、整備新幹線も「迷惑施設」なのかなぁと思います。
北陸新幹線も敦賀以西のルートが定まっていないようですが、こちらも並行在来線の問題で揉めているそうです。
だからどうも整備新幹線の整備は、あんまり諸手を挙げて賛成できないとことがあるんですよねぇ。。どうにかならんのか。
そもそも、西九州新幹線っているのか??
全線開業への見通しが立たない西九州新幹線ですが、こうなってくると「そもそも西九州新幹線は必要なのか???」という根源的な問いが生まれてきます←
先に述べた通り、西九州新幹線は都市間輸送としては実質的に福岡と長崎のたった2都市しか結びません。
同じ整備新幹線でも東北新幹線(北海道新幹線)、北陸新幹線が多数の都市を結んでいることを考えると、福岡 – 長崎の短い距離にフルスペックの新幹線をブチ込むのはオーバースペックに感じます。九州新幹線も短い路線ですが、福岡 – 熊本 – 鹿児島と九州を縦断し3都市はつながりますし、九州最大都市・福岡と九州第二都市・熊本が繋がるという大きな効果があります。
西九州新幹線で現在フル規格で整備されているのは66kmと破格の短さで、仮に全線フル規格整備されたとしても140kmほどにしかなりません。新幹線としては短い九州新幹線でも288kmありますので、さらにその半分と考えるとめちゃくちゃ短いです。
長崎が熊本のような地方第二の都市であるとか、それこそ昔のように唯一の貿易拠点があるとかなら別ですが、正直なぜこのような「長崎のためだけの新幹線」が整備されることになったのか、正直理解不能です。長崎市の人口は38万人と、大分市(46万人)はおろか宮崎市(39万人)にすら抜かれて、九州の県庁所在地としてはワースト2位の体たらくですし。
まあ、昔は人口も多かったし、長崎本線が「九州の二大本線」だったという歴史的経緯はあるようですが、今となってはその大義は失われていると感じます…。
運輸省は73(昭和48)年、整備新幹線5路線の整備計画を決定した。北海道、東北、北陸、鹿児島-そして、ここに枝線のような長崎ルートが入ったのはなぜか。旧国鉄出身でJR九州初代社長の石井幸孝氏(89)が解説する。「戦前から、陸軍都の熊本を結ぶ『鹿児島本線』と、三菱の造船所や海軍佐世保鎮守府につながる『長崎本線』は九州の二大本線だった」
「これで長崎は良くなる」 新幹線計画決定・むつ念書 見返りは空手形に 長崎新幹線の軌跡・1 – 長崎新聞
佐賀県との協議も膠着状態で、短い新幹線のまま対面乗り換えが固定化されそうな感じがしますが、どうなっていくんでしょうかねぇ。全線開業するのが先か、それとも廃線になるのが先か!?生きているうちにどのような結果を見ることになるでしょうか。。
  
  
  
  

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