歯医者の「メンテナンス」と称するクリーニングは本当の予防歯科なのか?

今日は歯医者へ行ってきました。

3年前の春から深刻な歯の問題を抱えていますが、特に有効な打開策は見出せない中で、とりあえず3ヶ月に1回「メンテナンス」には通って、歯医者との縁は切れないようにしている感じです。

近年は「予防歯科」の考えが広まっており、「普段から定期的に歯医者に通うことで歯の状態を良く保ち、虫歯や歯周病を始めとする疾患を予防する」ことが推奨されています。

歯というのは虫歯になって削ったりすると決して再生することはなく、抜けたら最後の臓器です。つまり、一度疾患になると何かと取り返しがつかなくなるのが歯です。

その一方で虫歯や歯周病は、歯磨きなどのセルフケアや生活習慣により予防できることが分かっており、取り返しがつかなくなる前に予防する、そもそも疾患にならないことが大事というわけですね。

なので、最近は歯医者にかかると大抵の場合「定期的なメンテナンス」を勧められ、3ヶ月に1回程度は受診する流れになります。それが予防に繋がるから、と。

私は歯の問題が生じてからは延べ3軒の歯医者にかかり、うち2軒ではメンテナンスで定期的に通いました。そしてその「メンテナンス」でやることといえばクリーニング。定期的に歯医者に通っている他の知人に聞いても、基本的にはクリーニングをされているそうです。

恐らく、日本中の多くの歯医者で「メンテナンス」と称して「クリーニング」が行われているんだと思います。

でも、クリーニングって本当に「予防歯科」なのだろうか?って、正直疑問に思います。

毎日汚れるところを3ヶ月に1回クリーニングして意味はあるのか?

クリーニングといえば、基本的にはPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と歯石取り(スケーリング)をやります。

PMTCで磨き残された歯垢(プラーク)やバイオフィルムを徹底的に除去し、スケーリングで歯にこびりついた歯石を除去することで予防に繋がる、ということですね。特に歯石は歯周病の原因とよく言われており、歯医者で定期的にスケーリングをしておけば歯周病にならない、といった風潮さえあるように思います。

しかし、人間というのは毎日3回食事をするわけですから、歯というのは毎日汚れるところでもあるわけです。

その毎日汚れる歯を、3ヶ月に1回綺麗にすれば虫歯や歯周病が予防できるのでしょうか?

3ヶ月に1回、1年に4回通うとして、残りの361日はどうなるのでしょうか・・・?

私がこういう疑問を抱くのには理由があって、大学生の頃「痔瘻」という痔の一種に罹ったからです(ぇ

詳しくは調べていただきたいのですが、痔瘻というのは「穴痔」とも呼ばれ、肛門付近で細菌感染を起こし、それによりお尻にもう1つ穴が出来てしまうという恐ろしい病気です←

最初は肛門科“も”標榜している病院を受診したのですが、そこでは肛門科専門病院にかかるまでの間、受診に度に痔の穴(管)に器具を貫通させられ、消毒をされました。しかし、肛門科専門病院ではそのような消毒の処置は一切されなかったんですよね。

私も当時痔瘻についてネットでよく調べていたのですが、その中に肛門科専門医が書いているページが見つかり、

瘻管を消毒をする処置もあるが、これは意味がないことだ。そもそも、肛門というのは排便で毎日汚れるところである。そこをたまに消毒したところで何の意味ががあるのか。

という趣旨のことが書いてあり、私も素人ながら納得したのをよく覚えています(もう大分前の話なので細かい言い回しはあやふやですが、趣旨としてはこのようなことが書いてあったはずです。今ネットで調べたけど、そのページは見つけられませんでした)。

どうも、歯のクリーニングはこれと同じ話のような気がするのです。

「本当のPMTC」の意味

そもそも、クリーニング、PMTC=予防という考えはスウェーデンのペール・アクセルソン博士が提唱したものらしいですが、それは本来「必要性のある部位に行う」ことを中心とした考えのようです。

むし歯や歯周病は決まった部位にできやすい。しかもその部位は、年齢・性別問わず共通している。そう気づいた彼は、こんな仮説を立てました。

アクセルソン博士の仮説
“むし歯や歯周病になりやすくプラークが停滞しやすい部位”がある一定のパターンに限られているのなら、そこを“リスク部位”として集中的にクリーニングすればいいのではないか?

口腔内全体ではなくリスク部位を集中的にクリーニングすることが、歯を守るために必要なのではないかと考えたのです。

「確実に歯は守れる」と証明したアクセルソンの研究 – タフトくらぶ

平成23年5月29日、このアクセルソン先生が来日され、一度だけ講演されました。

(中略)その講演の中で、アクセルソン先生が何度も強調されたのは、PMTCは『必要性の高い部位にのみ行うべきである』ということでした。

更に、『必要性のない部位に行うのは、犯罪行為である』とまで仰っていました。

定期検診・クリーニングだけでは歯を守れません – さくら総合歯科

また日々の臨床で行う歯面清掃と異なりキーリスクとなる歯のキーリスクとなる歯面を集中的に清掃し、バイオフィルムを除去することが本来のPMTCです。使用する医療器械や医療器具の使い方も指定があり、細かなルールがあります。

スウェーデン、マルメ大学の講義と同様にアクセルソン博士の講演でも言っていましたが今回のセミナーでも同様に、すべての歯面を行うのではなく、その患者さんの口腔内でリスクとなっている部分を衛生士が正確に把握し、リスク部位のみをケアしていくことの大切さを再認識しました。

アクセルソン先生考案のオリジナルPMTCの極意 – 麻生歯科クリニック(強調は引用者によるもの)

しかし、今の日本の歯医者では、ただ漫然とクリーニングをしているだけの医院が蔓延っているように思えてなりません。

「強く磨かないで」言った次に、機械で歯を磨く?

ブラッシング指導で「強く磨かないで」と言った後に、自分たちは機械で歯を磨いているわけですから、それもおかしな話なわけです。

細心の注意を払ってクリーニングしているとは思いますが、それでも手でブラッシングするよりも機械でブラッシングしたり、超音波を当てるほうがよっぽど歯にダメージ与えると思うのですが・・・。機械的振動も生じますし。

本当に必要なクリーニングをたまにする分にはいいと思いますが、3ヶ月に1回やれば40年間で160回クリーニングすることになるわけで、それだけ頻回にやればダメージが蓄積するのでは・・・と心配になります。

クリーニングとは「魚を与える」こと、真に必要なのは「魚の釣り方」ではないか

ただ、PMTCは実際に予防に効果があるという研究結果があるようですし、歯石も付いてしまったものはスケーリングで除去したほうが良いでしょう。私もクリーニングの全てを否定する気はありません。

でも、クリーニングとは詰まるところ「魚を与えている」だけに過ぎないと思います。その時の飢えは凌ぐことはできるかもしれないけれど、それっきり。

本当の予防歯科、メンテナンスとは「魚の釣り方を教える」ようなものではないでしょうか。

年に4回のクリーニングよりも、残りの361日間のセルフケア、生活習慣のほうがよっぽど予防において重要のはずです。歯というのは死ぬまで付き合う臓器だから、その場の飢えを凌ぐことよりも、一生食べていく術を教えるべき、学ぶべきです。

口腔内の詳しいチェックはもちろんのこと、セルフケアや生活習慣の確認や指導に重きを置いた診療が、本当のメンテナンスであり予防歯科であると思います。

しかし、日本の歯医者では「クリーニングこそが予防」かのように、軽く口腔内をチェックして、さっとクリーニングだけして患者を帰してしまう。

「歯石は歯磨きでは落とせないから、歯医者でスケーリングしなきゃ」みたいな風潮もありますが、そもそも歯石が付かないセルフケアを実践すればいいだけの話です。セルフケアで歯石の付着は防ぐことができるのですから。私も歯医者に行くと「歯石は付いていません」と褒められます←

でも、多くの歯医者では歯石が付かないセルフケアを教えることなく、ただ漫然とクリーニング、スケーリングだけやっているところがほとんどでしょう。これの一体どこが「予防歯科」なのでしょうか。
(そもそも歯石が付いていなくてもスケーリングをしているのだろうが・・・。まあ歯肉縁下歯石とかもあるんだろうけど。。)

真のメンテナンスをしてくれる歯医者を求めて…

ただまぁ、本来の「予防歯科」を診療の中で行なっていくにはいろいろ障壁があるんだろうとは思います。

そもそも、日本の健康保険制度において予防というのは制度の対象外ですから、本来は予防歯科は自費で受けなければならないものです。

ある程度、保険診療の中でも予防歯科的行為も認められていますが、やってもクリーニングで終わる程度でしょう。保険診療の中に「歯科衛生実地指導」という診療項目がありますが、これは「15分以上実地指導」して「指導内容を文書で提供する」という内容です。でも、文書で貰った人なんてどれだけいるんですかね???

しかも保険診療でクリーニングやっても、今日は上の歯、次は下の歯だから次回の予約を・・・みたいな感じで無駄に間延びさせられますし。私が通っていた歯医者では、してもいない検査をしたことにして1回で全部終わらせるという荒技を繰り出していましたw(よくそれで診療明細発行できるなと思うが・・・w)

真のメンテナンスを求めれば、時間と手間がかかるものになるのでやっぱり自費診療で高い金を払うしかないのでしょう。でも、自費診療でも真のメンテナンスをやっている歯医者ってあるんかな?って感じです。

私が以前通っていた歯医者でも「自費診療のメンテナンス」はありましたが、それは「もっと豪華なクリーニングができる」「歯科医がマイクロスコープで虫歯チェックする」といった内容で、やっぱり魚を与えるだけのようなものでした。

今通っている歯医者では自費診療でメンテナンスをしているのですが、4,000円でクリーニングのみです。まあ、こちらは単に保険診療の制約を受けないための自費診療って感じです。

保険診療じゃただのクリーニング、自費診療も豪華なクリーニングで、一体どこの歯医者に行けば真のメンテナンスを受けることができるのやら・・・。どの歯医者もホームページで予防歯科の重要性を説いていますが、真の実践はしていないようです。。

結局、「ただのクリーニング」を定期的に実施することで患者との縁が切れないようにして、疾患になれば治療費もゲットできてラッキーって感じですよね・・・。

本当に良い歯医者って、どこにあるんでしょうかねぇ・・・。

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